中医薬膳指導員認定試験を受ける方、受けようと思っている方は、どんな試験なのかどんな問題が出るのかドキドキだと思います。ここでは実際に受験して満点!で合格した私が、講師の方や先輩から聞いた例年の試験の内容も踏まえて、全容を詳しく!お伝えします。
中医薬膳指導員認定試験の概要
試験の日時と会場
日時:毎年3月末の日曜日
近年の実施日を見てみると3月の第4日曜日に行われています。
会場:東京、名古屋の他、京都、広島、鳥取、高知、沖縄など。
地方の会場についてはその年のその地域の受験者の数により変動があるようです。本試験とその前に行われる受験対策セミナーは会場が同一です。
試験の対象範囲は?
日本中医食用学会の初級講座、または指定のカリキュラム講座で使用した赤いテキスト「中医薬膳」の各項目から平均的に出題されます。この一冊にしがみついて全部頭に入れてしまえば満点が取れます。
テキストの内容は以下の通りです。
- 中医基礎理論
- 中医診断学
- 中薬学
- 方剤学
- 中医栄養学
- 中医薬膳学
- 季節の薬膳
- 弁証施膳
毎年出ない項目が一つあります。それは中医基礎理論の中の「経絡」です。「経絡」の内容については参考に理解している程度でよく覚えるまでは必要ないようです。(これは通例となっていますが突然の変更が心配な方は準備対策セミナーで事前に確認くださいね。)
テキストには実際に料理を考える施膳の単元が「季節の薬膳」「弁証施膳」と二つありますが、試験では「季節の薬膳」のみが記述式で出題されます。「 弁証施膳」の問題は選択式の簡単なものになっています。(「弁証施膳」の記述問題は国際中医薬膳師の試験で出ます。)
また私が受験した年には、中薬学の「配伍七情」と中医栄養学の「定義と内容」については出題されませんでした。このことは事前の対策準備セミナーで教えられました。セミナーではこのような情報が得られるのでぼーっとしていないでしっかり聞いておきたいですね。
まとめると
- 赤いテキスト「中医薬膳」をマスターすればOK
- 経絡の問題は例年出題されていない
- 施膳の問題は「季節の薬膳」が出題される(「弁証施膳」は出題されない)
- 事前の対策準備セミナーで出題情報が聞ける場合がある
出題形式と配点は?
試験は第1部の中医学と第2部の薬膳学に分けて行われます。配点は下記の通り。
- 第1部 中医基礎理論、中医診断学、中薬学、方剤学で130点
- 第2部 中医栄養学、中医薬膳学で50点、季節の薬膳で20点
合計で200点満点。7割以上取れれば合格です。平均点は高く190点を超えます。
全体の問題数から計算するとだいたい一問あたり1点だということがわかります。約200問あるうちみなさん数問を間違えてしまうということです。この数問のミスをなくして満点を取りたいものです。
出題形式別の配点の割合(目安)は次のとおりです。
- 適語や適文を選択する問題‥約7割
- 短い語句や用語を記入する問題‥約1割
- ○✖️式の問題‥約1割
- 季節の薬膳の記述問題‥1割
具体的にどんな問題が出るのか
この試験は、テキスト「中医薬膳」を理解して徹底的に覚え、受験対策セミナーで配布される問題集をやることで合格できます。他の勉強をしなくても大丈夫。
テキスト「中医薬膳」はそもそも大事なことを要約して書かれているものです。なので省ける部分がなく覚えなくていい部分がほとんどないんですね。山ははれないということです。
ですがこの後、すべて重要な中でもほんの僅かな差を追求して、出題されやすい項目を挙げてみました。必ず出題されると誰でもわかるところはあげていません。
過去問題集はありませんし試験問題は当日その場で回収されます。ですが出題内容を微妙に変えながら毎年ほぼ同様の形式で行われていることがわかっています。
ここから、理論の問題(中医学理論と薬膳学理論の問題)、施膳の問題(季節の薬膳の記述問題)について、分けて説明します。
そのうち季節の薬膳の記述問題は、いかにして減点を免れるか事前に知っておくべき大変重要な内容なっています。ぜひ押さえておいてください。
中医学理論と薬膳学理論の問題
適語選択式・○✖️式の問題
〈適語選択式〉
適語や適文の選択問題が全体の約7割です。一つの問題の中に複数の文章や問いがあって、語群の中から正しいものを選んでいくという形です。語群の中に答えがあるのできちんと理解していれば用語など完璧に暗記していなくても正解できます。
〈○✖️式の問題〉
○✖️式の問題は少ないです。うっかり間違えやすい内容が多いので簡単そうに思えて実は要注意です。小さなことを正確に理解していることが大切です。とにかくテキストを繰り返し読んで読んで読みまくってください。
全体から満遍なく出題されるので、ここが出る!というところを挙げることができません。そこで詰めの甘くなりやすいところ、理解が曖昧で間違える人が多くて出題されやすいところを挙げます。学会側からすると「ここ大事なのにみんなよく間違えるから正しく覚えてほしい」ということです。
♦︎よく間違えやすい問題♦︎
- 中医学概論/中医学の古典と著者(黄帝内経、神農本草経、傷寒論、千金要方、食療本草、飲膳正要、本草綱目)
- 五行学説/五行の特性(曲直、炎上、稼穡、従革、潤下)
- 蔵象学説/臓腑の表裏分類、三焦の生理機能
- 気血津液学説/気の分類(元気、宗気、営気、衛気)、気機と昇降出入、津血同源、精血同源
- 病因病機/六淫の性質/風邪の善行数変、湿邪の重濁・粘滯、寒邪の凝滞・収引
- 中医診断学/切診/代表的な証を表す脈
- 弁証/臓腑弁証/母病及子、子病犯母
- 予防と治則/未病先防、上工治未病、治病求本、扶正袪邪、三因制宜
- 中薬学概論/中薬の採集時期
- 中薬の薬性理論/四気(+平性)五味、昇降浮沈、配伍禁忌「十八反十九畏」(中薬名不要)
- 方剤学/組成原則(君臣佐使)、煎法と服薬方法
- 中医営養学/四性五味、淡味と渋味、以臓補臓、昇降浮沈、補瀉調
- 薬膳学/陰陽平衡・調整臓腑・扶正袪邪、食物の配伍、妊婦と児童の禁忌、食養と食療
すべて選択式なので、書けなくても内容をしっかり理解して覚えていれば大丈夫です!
用語や語句を記入する問題
絶対的に覚えていなければならない最低限の用語や語句を記入する問題があります。予想されるものを挙げておきます。ほとんど出ると思っておいてよいと思います。
♦︎用語を直接記入する問題で出るところ♦︎
- 陰陽学説 陰陽の例
- 五行学説 五行相関図と五行属性表(絶対出ます)
- 蔵象学説 臓腑の陰陽、五臓
- 病因・病機 六淫、内傷七情
- 中薬学 四気五味
- 八綱弁証 八つの証
五行の「木・火・土・金・水」などのように短い簡単な用語です。どれも基本的なものなので間違える方は少ないと思います。この中で大変なのは一つだけ、五行属性表ですね。
表のすべてを暗記しなければないので気持ち的にも負担になります。けれどこれは中医学の基本中の基本なので仕方ないです。
理論問題のあるあるに朗報!
試験が近づいてくると不安になるのが、臓腑弁証・中薬学・方剤学だと思います。ひらがなのない漢字の羅列オンパレード、今まで使ったことのないような漢字もたくさん出てきます。特殊な用語や表現ばかり。これ、全部覚えなきゃならないの?ってなりますよね。
①臓腑弁証の難しい証の名前が覚えられない
難しそうな漢字の羅列への拒否感がまずありますよね。最初の頃はどうやっても覚えられそうにない気がします。でも大丈夫です。選択式だから書けなくても意味をしっかり理解していれば正解できます。(難しい用語もいつの間にかびっくりするほど慣れて、いずれ定着しますよ)
②中薬学の分類名、中薬名が覚えられない
中薬学についての問題は薬性理論が中心です。特に四気五味や昇降浮沈の作用が出ます。中薬の名前をたくさん覚える以前に大切なことである基礎理論を重視してるんですね。
中医薬膳指導員が覚えるべき最低限ラインの中薬の名前と働きは、季節の薬膳のページの「食材と中薬」の表にあります。食材とセットで覚えるのがコツです。
③方剤学のたくさんの方剤名が覚えられない
結論から言うと、方剤学の問題は少ししか出ません。方剤名は分類ごとに代表的なものがわかっていればすべてを暗記しなくても大丈夫です。もちろん選択式ですから難しい漢字は書けなくて大丈夫。ここでも理解していることが大事です。
少ししか出題されないと言うことは難易度の高い問題まで至らないと言うことです。和解剤や表裏双解剤、開竅剤などまで出題の枠は回らないですし、そこまで求められていません。私が受験した時も簡単なものしか出ませんでしたよ。
○出題する側の意図を知れば怖くない○
中医薬膳指導員の上位資格には国際中医薬膳師の資格があります。ですから主催側には中医薬膳指導員はここまで、国際中医薬膳師はここまで、という線引きがあるんですね。中医薬膳指導員に求めているのはとにかく基礎の確実な理解!
たとえば方剤学では、たくさんの方剤名を覚えることはもちろん大事です。でもそれ以前に今大切なのは組成原則や煎法、服薬方法を正しく知ること、各方剤の目的と働きがしっかりわかっていることです。だからここでは代表的な方剤さえ理解していればOK、それ以上の知識を求めるのは国際中医薬膳師の範囲としているからです。
中薬学でも、出題されるのはテキストで施膳の食材表に併記されている中医薬としているようです。国際中医薬膳師ではすべて覚えていなければなりません。臓腑弁証は代表的な証の症状と治法くらいまでしか問われないです。こちらもそれ以上のことは国際中医薬膳師の勉強でしっかり習得します。
というわけで、みなさんが不安に思っている臓腑弁証、中薬学、方剤学はそこまで恐れる必要はないです。もちろんテキストに載っていることはすべて理解しなくてはなりませんが、深いところまですべてを試験で試すわけではありません。
国際中医薬膳師になるための上級コースを受け受験勉強をすると、中医薬膳指導員の試験で求めているのはここまでなんだと知ることができます。
「季節の薬膳」の記述問題
試験の一番最後の施膳の問題が、この「季節の薬膳」の記述問題です。1ページ丸々あり配点が20点あります。上半分は理論、下半分は治法に基づいて自分が考案した料理、施膳内容についてです。
春、夏、長夏、秋、冬の中から一つの季節が選ばれます。どの季節が選ばれるかはわかりません。どの季節が選ばれてもいいようにすべてを暗記しなければならず大変です。私はここの暗記が一番の難関でした。
事前の受験対策セミナーでもらう問題集の最後に、この「季節の薬膳」の問題が載っています。問題集に載っているのとまったく同じ形体で出題されます。表の一番上の季節名の欄だけが記入されていて、それ以外の空欄をすべて記述で埋めていきます。
①理論の記述で大切なのは模範解答の完全コピー
その季節の施膳を行う基となる理論を記述で解答します。これがわかっていなければ施膳を行うことはできないからです。この季節の邪気は何で関連する五臓は何なのか、季節の特徴と邪気の特徴、人への影響、これを踏まえて施膳方針を立てます。
②施膳の記述で大切なのは五つの季節の料理をシンプルなものにすること
自分が立てた施膳方針を掲げ、使用する主な食材と効能、料理名と作り方を記述します。この部分はその場で考えるのではなく試験用に事前に組み立てて用意しておきます。すべての季節の薬膳をつくっておいて、どの季節が出されてもいいようにしておきます。
五つの季節の薬膳を考えたら、講師の先生に見てもらうことをお勧めします。受験対策セミナーでも添削をしますが、施膳はできていそうでそうでもないことも多いです。それは一般的な料理を考えるるように薬膳料理を考えてしまうところにあると思います。
考えた料理は、食材一つ一つの四性(五性)五味や帰経、効能などを書かなければなりません。書いたものが間違っていたら減点されます。少ない食材でシンプルな料理、これに尽きます。
③料理を考えるときの大事なポイント
♦︎評価される施膳♦︎
- 各季節の施膳の原則(テキスト参照)、選択した施膳方針に忠実である
- 効能において代表的な食材を使っている
- 旬の食材を使っている
- 中薬食材を使っている
- 内容が簡潔である
④解答の書き方
問題の解答には推奨される記入の仕方があります。施膳を考える際のポイントやコツといっしょに確認してくださいね。
施膳方針の欄
施膳方針は治法のことです。例えば春なら疏肝理気、滋補肝腎など。当然ですが一つに決めます。迷うときは①料理を考えやすい方、②簡単な料理を考えられる方(特に少ない食材で)を選ぶといいです。私は②をおすすめします。考えた料理の内容はすべて記憶して書かなければなりません。少しでも文字数が少ない方が楽で無難です。
食材と効能の欄
この欄がとても重要でとても大変です。食材ごとの①四性(五性)五味と②帰経、③効能をすべて書きます。内容が複数あれば複数記入します。例えば効能に清熱と生津があった場合二つとも書きます。帰経も同じくです。
●食材名
組成原則の君臣佐使に従います。主要材料、補助材料、佐使材料をそれぞれ書きます。食材の量は少ない方がよいので基本四つの食材で完結するのがよいと思います。多くても5つくらいまでがいいですね。シンプルな方が治法が際立って採点者に伝わりやすいですし、自分自身も記憶するのが楽です。
大切なポイントに食材の選び方があります。薬膳料理における代表食材や旬のものを使うと評価が高いです。そして可能なら中薬を食材の一つとして使えるとレベルが上がりますね。山芋や枸杞の実、紫蘇、薄荷、百合根、はとむぎ、くるみなど気軽に使えるものも多くあります。
長夏における健脾利湿の薬膳で、私はさつまいもととうもろこしの料理を作りましたが、そのときとうもろこしのひげも使いました。とうもろこしのひげは玉米鬚という中薬です。
●四性(五性)五味
それぞれの食材について四性(五性)五味を書きます。書き方に決まりがあります。
五味/四性(五性)のようにこの順番で書きます。主要食材が三つ葉の場合次のようになります。
●帰経
四性(五性)五味の隣に帰経を書きます。次のようになります。
●効能
帰経の隣に効能を書きます。次のようになります。(これで完成形)
●この下に、補助材料、佐使材料と続きます。
→ 主)三つ葉 甘/微涼 肝脾胃 理気
補)ゆず 甘酸/涼 肺脾肝 理気
佐) ‥‥
作り方の欄
解答のポイントは簡潔に書くことです。それにはまず作り方がシンプルであることが大事です。無駄を省いて短い言葉で箇条書きにします。
内容のポイントは料理法や調味料による昇降浮沈を考慮することです。調味料の四性(五性)五味も大切です。温かい料理なのか、水分の多い料理なのか、酒で炒る料理なのか、酢を使うのかなど効能を配慮した作り方かどうかを確認しましょう。
「季節の薬膳」問題のまとめ
- どの季節が出題されるかわからないので全ての季節について覚える。
- 理論の記述(解答欄上半分)は問題集の模範解答を完コピする。
- 施膳の記述(解答欄下半分)の料理は事前に考えて覚えておく。
- 料理は評価されるポイントを押さえて考案する。
- 食材は君臣佐使の4種類、多くて5種類くらいにする。
- 施膳方針は一つだけ記入する。
- 食材の効能と帰経はすべて記入する。
- 作り方は箇条書きで簡潔に書く。
最後のアドバイス
〈社会性のある疾病〉
以上、中医薬膳指導員認定試験について詳しく詳しく解説してみました。最後に出題の傾向としてお伝えしたいことがあります。それは社会動向としての病気の流行を捉えておくことです。
その時々によって認知するべき病があります。たとえばエボラ出血熱、デング熱、SARSなどがありました。現在はコロナですね。また、うつ病はコロナにより一層増えました。うつ病が注目されれば不眠も出てきますね。毎年注意喚起されている熱中症もあります。
そういった社会問題として取り上げられる病気や症状は取り上げられやすいということです。たとえばコロナなら五臓の肺や、衛気、解表、清熱、止咳など関連するキーワードがいろいろ思い浮かびますね。熱中症なら気血津液や陰陽ではどのような状態にあたるのかなど考えます。
〈スケジュール調整〉
3月の本試験の前、おそらく2月に受験対策セミナーに参加します。セミナーで季節の薬膳の添削があるのでそれまでに5つの料理を考えておきます。その後は添削をもとに料理を試験用に修正して解答を完成させます。
本試験までの期間はこの施膳を中心にとにかく暗記することに集中した方がいいです。そうなると受験対策セミナーまでには理論のすべての復習を終わっていることが必要になります。
万が一、突然試験の形式が変更になることがあったとしても、内容については今回私が解説したことが大きく変わることはないと思います。参考にしていただけたらうれしいです。
コメント